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大麻成分のアントラージュ効果とは。CBD単体ではなくオーガニックにこだわる理由。

 
こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。

今回はカンナビス(大麻)のアントラージュ効果(Entourage effect)について解説します。

前回に引き続き、医療大麻やCBDサプリメントを理解する上で欠かせない基本事項といえます。

そして、アントラージュ効果、めちゃくちゃ面白いです。実は私たちは普段からこのアントラージュ効果の恩恵を享受しています。

では今回も一緒に勉強していきましょう。なお、CBD?THC?なにそれ?という方は「CBDオイルとは。」を参考にしてください。

内容は以下の順でお話しします。

今回の内容
●アントラージュ効果とは。

●香気成分としても有名なテルペン類もアントラージュ効果に関与。

●CBDのアントラージュ効果。

●アントラージュ効果を利用した医薬品。

アントラージュ効果とは。

アントラージュ(Entourage)とは、もともとフランス語で「取り巻き」や「周囲環境」を意味する言葉です。

そしてアントラージュ効果とは、大麻草から分離した個々のCBDやTHCなどよりも、大麻草をそのまま抽出したオーガニックエキス(植物エキス)のほうが多くの成分の相互作用によって優れた治療効果を示したという時の相乗効果のことを意味します。

これは私たちも普段から経験していることなのです。例えば、食事をとるときに炭水化物やたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを個々に摂取するよりも一緒に摂取するほうがそれぞれの機能を最大限に発揮することができます。

さらにいうと、ビタミンなどのサプリメントを摂取するよりも野菜や果物を多く摂取したほうが健康であることも同じような理由です。

西洋医学が扱う(普段お医者さんから処方されるような)薬などは一つの成分にこだわる傾向がありますが、東洋医学が扱う漢方やハーブは様々な成分の相乗効果に注目しており、生物の複雑な代謝機能の調節などにはたらきかけ、自然治癒を促すのです。


CBDはTHCの向精神作用(陶酔作用)を抑制する効果があり、副作用を軽減します。

さらに、CBDはTHCの薬理作用の持続性などを高めることもわかっています。

また、CBDとTHCの薬理作用(例えば鎮痛作用や抗うつ作用)は異なる作用機序(方式)によってもたらされるため、単純にそれぞれの薬理作用の相乗効果も期待できます。

余談ですが、副作用を軽減するというと、例えばコーヒーや辛い料理を摂取するときに牛乳と一緒に飲むと胃が保護されて胃痛などの副作用を軽減してくれます。広い意味ではこれもアントラージュ効果になります。※わかりやすく説明するため無理矢理な例ではありますが。


アントラージュ効果という用語は、THCを発見したイスラエルのラファエル博士らが1998年にエンドカンナビノイド・システムの研究において発表した論文で最初に使用しています。
参考文献)European Journal of Pharmacology 1998, 353(1), 23–31. (doi :10.1016/S0014-2999(98)00392-6)

なお、エンドカンナビノイド・システムをあまりよく知らない方は「エンドカンナビノイドシステムとは」を先に読んでいただけたらと思います。

専門的なお話
この1998年に報告された研究では、神経細胞や免疫細胞などに存在する受容体CB1やCB2に直接作用しない化学物質が、CB1やCB2に直接作用する内因性カンナビノイド2-AGの分解を阻害し、CB1やCB2への作用を促進しているということを報告しています。

また、「直接作用しない化学物質」は他の経路で抗炎症作用や鎮痛作用を示し、相乗効果に寄与しているとも指摘しています。植物性カンナビノイドでも同じことが言えます。

THCが他のカンナビノイドなどと一緒に存在することで、効果の持続性が増し、効率よく生体内で作用すると言えます。

有機化学の研究をしていた私としては、植物性カンナビノイドは水への溶解性があまり高くないため、他のカンナビノイドで薄めながら拡散させることで、局所的な作用や分解を減らし、安定的に体内へ循環させるのがいいのだろうとも解釈しています。※すべてがこの解釈に限りません。

香気成分としても有名なテルペン類もアントラージュ効果に関与。

大麻には500以上の天然成分が確認されており、そのうち100以上がカンナビノイドに分類されています。THCやCBDもこのカンナビノイドに含まれます。さらにそのほかには、テルペンやアミノ酸、たんぱく質、酵素、フラボノイド、ビタミン、ミネラル、脂肪酸など多くの成分が含まれています。

イーサン・ルッソ博士らはテルペン類はカンナビノイドと相互作用することで、カンナビノイドの薬効に相乗効果をもたらすということを2011年の論文にまとめています。ここでアントラージュ効果という言葉が再び取り上げられ、世界に衝撃を与えました。
参考文献)British Journal of Pharmacology 2011, 163, 1344–1364. (doi: 10.1111/j.1476-5381.2011.01238.x )

テルペン類はレモンやオレンジ、ラベンダーなどの香気成分として含まれていたり、ビールのホップにも含まれていたりと、案外身近な成分です。

この研究では、テルペン類とカンナビノイドの相互作用によって、疼痛、炎症、鬱病、不安、依存症、てんかん、癌、細菌感染症などの治療効果に対して相乗効果が生じることを指摘しています。

テルペン類で特に注目されている成分のひとつに、大麻やローズマリー、ホップ、バジル、セロリ、黒胡椒などに含まれているβカリオフィレンがあります。

βカリオフィレンは免疫細胞の調節に関わるCB2受容体に選択的に作用し、抗炎症作用や鎮痛作用を示すことが証明されています。

つまり大麻の抗炎症作用や鎮痛作用はカンナビノイドだけの効果ではなく、βカリオフィレンなどそのほかの成分との相互作用が重要であると考えられています。

CBDのアントラージュ効果。

CBDはCBD単体でも抗うつ作用、鎮痛作用、抗炎症作用などがあり、注目されていましたが、単一のCBDでは、ある量を超えると治療効果が大幅に低下することがわかりました。

これは、用量反応曲線が釣鐘状になるとよく表現されます。(下図)

引用:News.herbapproach.


前回の記事「エンドカンナビノイドシステムとは」でも取り上げましたが、細胞内の働きにはフィードバック調節があります。

これは有機的なネットワークによるもので、このような生体内のネットワークに作用する薬には一般的に最適な投与量があり、少なすぎても多すぎても薬理効果が低下します。

薬が多く投与されると、過剰な刺激を拒否するために生体は受容体のスイッチを切ったり、ネットワークを遮断するような制御をしています。これが、用量反応曲線が釣鐘状になる理由です。

生体系のネットワークシステムに作用するカンナビノイドにおいて、単体では最大限に効果が発揮できる適量域(薬効範囲)は狭いといえます。

他方で、単一のCBDではなく、CBDを多く含む大麻エキスでは少量でも著しい鎮痛作用などがみられ、適量域(薬効範囲)が広いことがわかりました。

すなわち、多数のカンナビノイドと他のテルペノイド(テルペン類)、フラボノイドなどの化合物とのアントラージュ効果によってCBDの適量範囲が拡大するということが示されました。

専門的なお話
CBDはカンナビノイド受容体CB1のアンタゴニストであり、THCのCB1への過剰な作用を抑制します。これにより、THCの向精神作用が抑制されていると考えられています。

しかし、実際には、CBDがTHCの向精神作用を抑制するメカニズムは完全には解明されていません。

最近の研究報告では、THCが関与してドーパミン活性状態の調節異常などをもたらす経路をCBDが阻害することでTHCによる神経異常を防止しているということを報告しており、解明が進んでいます。
参考文献)

また、CBDはCB1やCB2との直接的な作動薬としての重要性は低いのですが、内因性カンナビノイドの分解を抑制する効果があるため、間接的にCB1やCB2との作用を促進しています。

アントラージュ効果を利用した医薬品。

引用:https://www.freeml.com/bl/14048806/154381/

アントラージュ効果を利用した医薬品も実際にイギリスのGW製薬により開発されました。

ナビキシモルス、商品名:サティベックスはCBDとTHCが1:1で混合されており、多発性硬化症などをターゲットにした医薬品です。

また、ターゲットの治療分野に応じて有効なCBDとTHCの比率が異なるため、癌性疼痛や片頭痛にはCBDに対してTHCの割合が多い高THCの製剤、関節リウマチや炎症性腸疾患ではCBDが少し多めの割合で含有されている製剤、精神疾患やてんかん、脳卒中、肥満などには高CBDの製剤が好ましいとされています。

2018年にはCBDのみのエピディオレックスが製品化されました。THCによる副作用がなく、小児てんかんをターゲットにした医薬品ですが、成熟した成人にはアントラージュ効果のある高CBDの製剤、エキスのほうが最適かもしれません。

いくらCBDの安全性が高いとは言え、CBD単体を一日に多量摂取し続けたり、長期摂取するとなると身体への負荷が大きく経済的にも現実的ではないため、アントラージュ効果を利用した高CBDの製剤やそのほかの医療大麻エキスは必須といえるでしょう。




いかがでしたか。

カンナビスの潜在的なパワーは非常に面白く興味深いことばかりです。
今後の動向にも目が離せません。

さらに、CBDや大麻について詳しく知りたいという方のために、以下のリンク先で網羅的にまとめているので、参考にしてみてください。↓
【CBDについて】その特徴と歴史を徹底解説|ロキ – CBDカウンセリング|note


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さらにアントラージュ効果についての応用的内容が以下の記事にあります。知識が深まる、とにかく面白いテーマになっていますのでぜひご覧ください。↓


最後に参考書籍などを載せておきます。

『カンナビノイドの科学』は図解が多くて非常にわかりやすく、専門的な内容もかみ砕いて解説されていて万人におすすめの一冊です。

『医療大麻の真実』はより専門的な内容になっており、それぞれの疾患に対する説明が詳しくされていて非常に面白いです。興味のある方はみてみてください。

ではでは。

参考書籍。