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精神疾患に対するCBDの効果を研究した論文や臨床試験のレビューを読んでわかったこと【CBDとメンタルヘルス】


こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。

CBDは抗不安作用抗うつ作用抗炎症作用があると言われていますが、うつ病や双極性障害、不安障害などの精神疾患にCBDがどれくらい効果を示すのか、もしくはどこまでそのような研究が進んでいるのか、疑問に思ったことはありませんか。

今回はそのような疑問について最近の研究論文を紹介しながらお答えしていこうかと思います。

今回の内容
●精神疾患におけるCBDのヒト臨床試験をまとめた二つのシステマティックレビュー。

●精神疾患ごとのCBDのランダム化比較対照試験(RCT)実施状況。

●精神疾患ごとのCBDの有効性(エビデンスレベル)について。


まず、結論から言うと、統合失調症による精神病以外の精神疾患については圧倒的に研究・臨床試験が不足しています。

物質使用障害やASD併存症状、一部の不安障害へのCBDの有効な効果はいくつかの調査で示されましたが、エビデンスレベルの高いランダム化比較対照試験(RCT)はほとんど報告されていません。

では、それぞれの精神疾患ごとにどういった状況なのでしょうか。これから一緒にみていきましょう。

精神疾患におけるCBDのヒト臨床試験をまとめた二つのシステマティックレビュー。

CBD(カンナビジオール)はTHCの向精神作用を軽減し、抗不安薬および抗精神病薬の特性を持つことが明らかになってきています。

最近、メンタルヘルス・精神疾患におけるCBDのヒト臨床試験をまとめたシステマティックレビューが二つ報告されました。

ひとつめのレビューは『メンタルヘルスにおけるカンナビジオールの治療的役割』という題目の論文でした。
参考文献)Journal of Cannabis Research 2020, 2, Article number: 2.

ここでは2018年末頃までの研究において23件の論文が絞り込まれ、そのうちランダム化比較対照試験(RCT)は8件しかありませんでした。

なお、ヒトの精神疾患に対する研究で、CBDもしくはサティベックス(CBDとTHCが1:1の薬剤)を使用した例で絞り込んでいます。

もうひとつのシステマティックレビューは『精神疾患におけるCBDの利用』という題目のものでした。
参考文献)NeuroToxicology 2019, 74, 282-298.

ここでは18件の公開済みのランダム化比較対照試験(RCT)と9件の現在進行中で未報告のRCTが絞り込まれました。※このレビューが書かれている時点において。(2019年)

後者のレビュー『精神疾患におけるCBDの利用』の方が取りこぼしがないような印象を受け、内容的にも、より厳密でした。

しかし、いずれにおいても、いかに精神疾患におけるCBDの有効性の評価が進んでいないかということが痛感させられます。

さらに、限られた数のRCTにも関わらず、研究対象群の病状(慢性か急性か、軽症か重症か、など)や製剤の種類、投与方法、投与量、投与期間などの条件が統一されていないため、全体的な解釈は非常に難しい状況と言えます。

CBDの有効性をよりよく評価するためには、さらに大規模なRCTを追加で行う必要があります。

精神疾患ごとのCBDのランダム化比較対照試験(RCT)実施状況。【2019年下半期時点】

2019年に報告されたレビュー『精神疾患におけるCBDの利用』においてまとめられた結果をもとに、以下に疾患ごとのRCT実施状況をいくつかピックアップしました。すべてランダム化比較対照試験(RCT)です。


・物質依存障害

疾患[報告年]オピオイド依存症患者(ヘロイン中毒者) [2015年]
用量・期間CBD400mgもしくは800mgの急性投与
結果・備考プラセボと比較して、依存症状が減弱した


・精神障害
統合失調症患者 多数の報告あり 省略


・不安障害

疾患[報告年]社会不安障害患者(公共の場におけるスピーチに対する不安障害) [2011年]
用量・期間600mg CBDカプセルの急性投与
結果・備考プラセボと比較して、スピーチテスト中の不安や不快感、落ち着きのなさや認知機能障害が減弱した
疾患[報告年]不安障害患者(全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症[外出恐怖症]のいずれか):50人規模
用量・期間最大800mg/day CBDカプセルを8週間の治療期間で服用
結果・備考現在進行中 『Efficacy of daily CBD in treating symptoms of DSM-5 anxiety disorders.』


・気分障害

疾患[報告年]双極性障害I型もしくはII型患者:100人規模
用量・期間600mg/day CBDを12週間の治療期間で経口摂取
結果・備考現在進行中 『 Effects of CBD on depressive and anxiety symptoms, functioning and inflammatory biomarkers.』


・神経認知障害 

疾患[報告年]認知症を伴っていない特発性パーキンソン病患者:20人規模 [2013年] 
用量・期間75mg/dayもしくは300mg/day CBDを6週間の治療期間で経口摂取
結果・備考300mg/dayで他と比較してPDQ39の点数が顕著に低下した
※PDQ39はパーキンソン病患者のQOLを評価するもので、スコアが低いほど健康である
疾患[報告年]パーキンソン病患者(主に痛みに対しての評価):15人規模
用量・期間高THCオイル、THC: CBD=1:1のオイル、もしくは高CBDオイルを35日の治療期間で投与
結果・備考現在進行中 『Tolerability, safety and dose-finding of oil cannabis preparation for pain in Parkinson’s disease.』


・PTSD 心的外傷後ストレス障害

疾患[報告年]慢性PTSD患者:76人規模
用量・期間高THCマリファナ、THC: CBD=1:1のマリファナ、もしくは高CBDマリファナを3週間の治療期間で投与
結果・備考現在進行中 『Effects of cannabis on PTSD symptoms.』
疾患[報告年]PTSD持ちのアルコール依存症患者:50人規模
用量・期間400mg/day CBDを6週間の治療期間で経口摂取
結果・備考現在進行中 『Efficacy of CBD in treating alcohol use disorder in individuals with PTSD.』


※これらはレビュー『精神疾患におけるCBDの利用』が報告された2019年時点での内容です。

精神疾患ごとのCBDの有効性(エビデンスレベル)について。【2019年下半期時点】

今回紹介した二つのレビューを考慮して、各精神疾患ごとにどのような評価がなされているか、簡単に説明したいと思います。

まず、ランダム化比較対照試験(RCT)によって、パーキンソン病患者や統合失調症患者における精神病性障害に対してCBDが明らかな改善効果を示しており、不安や行動障害を軽減したという報告がありました。

これは他の精神疾患に比べて高いエビデンスレベルのものでしたが、それでもまだ追加の研究が必要とのことでした。

また、社会不安障害などの種々の限定的な不安症状やASD併存疾患(自傷行為やADHDなど)に対するCBDの効果については好ましい結果がいくつか報告されていました。

しかし、試験方法がRCTによるものではないなど、これらのエビデンスレベルは弱いという状況でした。したがってRCTによる調査が追加で行われることが望まれます。※ただし、かなり有望視はされており、関連するRCTが世界中で実施されているようです。(2019年)


一方で、双極性障害やPTSDなどに対するCBDの効果は未だ不明瞭であり、RCTが現在進行中のようです。

双極性障害(躁うつ病)については、レビュー『メンタルヘルスにおけるカンナビジオールの治療的役割』で症例報告がひとつ取り上げられていましたが、CBDの有意な効果はわからなかったという内容で、PTSDなどよりも更にCBDの研究が遅れている印象でした。

ただし、CBDは双極性障害に効果のある薬物と共通する特性を持つことや、CBDに抗うつ作用が存在することなどを考慮すると、うつ病や躁うつ病に対する、さらなる調査が必要です。


なお、関連記事として「CBDが重度のうつ病・薬物依存に苦しむ青年を救い、抗うつ薬の断薬に効果を示しました。」も参考になるかと思いますので、気になる方はご覧ください。

「CBDと精神疾患」における、より詳細なレビューや解説、また、その他のCBDの効果・作用に関するまとめなどについては、以下の記事で網羅的にまとめました。(※前編と後編に分かれていて書籍並みのボリュームになっていますが、無料公開している最初のまとめ部分だけでも有益な内容になっているかと思いますので、是非のぞいてみてください。


上のnote記事では双極性障害に対するCBDの症例報告や更なる考察についても取り上げています。さらに詳しくCBDについて知りたい方には必見の内容となっているので、参照していただけたら幸いです。





いかがだったでしょうか。

発達障害や精神疾患に対するCBDの研究はいまだ発展途上ですが、安全性の高いCBDは有望な選択肢として挙げられるでしょう。実際に私自身も利用していますが、その有益性を実感しています。今後の進展に注目です。

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