こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。
漢方薬(東洋医学)や西洋薬(西洋医学)は皆様も利用されたことがあると思います。
医師の処方箋が必要な、化学合成された医薬品は基本的に西洋薬に当たります。
では、漢方薬と西洋薬とで扱いが異なる理由はご存知ですか。実は、医療大麻がなかなか薬として認められない理由に、このことが大きく関わっています。
今回は、漢方薬と西洋薬の医学的な違いや対立に関して説明していきたいと思います。
では、以下の順に一緒にみていきましょう。
そもそもなぜ漢方薬と西洋薬は規制が分かれているのか。
今回、これらの疑問が解消できるように解説していきます。この漢方薬と西洋薬の対比の話はめちゃくちゃ面白いです。
薬理作用があるということは同じなのに、こうも規制や効果の傾向などに違いがあるのは少し興味深くありませんか?
医療大麻がなかなか処方薬として認められない理由の一つとして、このような漢方薬と西洋薬の対立が関係しています。※なお、この記事では医療大麻を例に説明していきます。
漢方薬と西洋薬・新薬の医学的な違い。
西洋薬・新薬は基本的に化学合成されたもので、しばしば単一の有効成分でできています。
単一成分薬は単一の成分にフォーカスしているため、効き目が強く即効性がありますが、持続性は低く副作用が強い傾向があります。
一方、漢方薬は様々な薬効成分が相互作用し保護し合う複合薬・多成分薬であるため、ひとつのターゲットに対する効果(効き目)は弱いことが多いけれども、持続性が高く副作用が弱いという利点があります。(漢方の例としてはハーブ由来のエキスなどがあります。)
つまり、複合薬では、異なるけれども性質の似た成分同士が混合している状態をイメージすると、成分同士による希釈(濃度が薄まる)効果と相互作用が、それぞれの成分の安定性(持続性)を高め、それにより体内の循環率が高まり、局所的な過剰作用が抑制されると言えます。(下図:鍵の形をしたものが薬の成分を表しています。)
※なお、薬の作用に関して詳しく知りたい方は「エンドカンナビノイドシステムとは。」も参照ください。
漢方薬は効き目が弱いという欠点を挙げましたが、漢方医学にはその欠点を解決する高次な発想があります。
それは、体内に存在する、いくつかのターゲット(受容体)がどれも同様の機能・効能を示す場合は、それぞれの効果が小さくてもそれらすべてのターゲットに作用すれば、全体で効き目が強くなり即効性を得ることもできる、というものです。
そのため、例えば、THC以外にも多くの成分を含む大麻の方が合成THCの薬よりも副作用が低いのに治療効果が高い、といったことが起こるのです。
※THCやCBDなどの大麻の重要成分に関して知らない方は過去の記事「CBDオイルとは。」などを参照ください。
では、大麻より治療効果が低く副作用の強い合成THCが薬として認められ、医療大麻は薬として認められなかったのはなぜか。
勿論、法律であったり歴史的な要因もありますが、ひとつには漢方医学の複雑さが関与しています。
医療大麻の医薬品開発が遅れをとる医学的な理由。
薬の成分が単一であったり、複数であっても成分同士の相互作用がほとんど認められない場合は、薬がどのような作用メカニズムで病気を治すかを解明することは比較的容易になります。
さらにその場合、有効量の再現性は高いものとなるでしょう。
近代西洋医学では、このようにメカニズムの解明と再現性のあるデータの獲得が重要視され、これらがいずれとも十分でなければ医薬品として認められません。
これを満たすために、まず、単一成分に純化して考える必要があります。
つまり、西洋医学は不要な部分を切り捨て、成分の均一性と効果の普遍性を追い求めています。
一方で、大麻は漢方薬のように複数の活性成分による相互作用によって効果を発揮するため、作用メカニズムを特定するのは極めて困難になります。
また、大麻は植物なため、同じ条件で栽培しても成分の質や量をいつも完全に同じにすることは困難です。
すなわち、メカニズムの解明と再現性の獲得が困難であるといえます。
これが、西洋医学では扱いづらい多成分薬である医療大麻を、西洋医学的な考えをもつ多くの科学者や開発者が研究や開発の対象にするのをためらう理由の一つと言えます。
また、植物からの抽出などとなると、新薬の合成での開発のように物質そのものの特許をとりづらいということも理由にあります。
漢方医学はむしろ進んだ高次の医学・薬学である。
事実として、THCやCBDなどの単一成分よりも大麻全体の方が薬効が強く、かつ副作用が弱いということが多くの臨床経験などからわかっています。
前述したように、複数の有効成分が相互作用することで相乗効果、すなわちアントラージュ効果を示すからです。※なお、アントラージュ効果に関して知らない人は「アントラージュ効果とは」を参照ください。
このように、全体を活用するという視点で薬用植物の利用法を追い求めるのが漢方医学(東洋医学)なのです。
もともと内因性カンナビノイドシステムのような人間の調節機能は体内の多くの機能制御に関わり、複雑系といえます。※内因性カンナビノイドシステムに関しては「エンドカンナビノイドシステムとは。」を参照ください。
この人間の調節機能のような複雑系に精密に作用できるような薬は高次な機能を持つ漢方薬であるということは本質的であると言えます。
これが、人間の調節機能を正常に近づけ、そのような状態を染み込ませることで人の持つ自然治癒力を高めうるといえるのです。
漢方薬の処方は薬効の中心となる生薬とその作用を補助する生薬で構成されています。大麻に含まれる成分の相互作用は、この漢方処方の考え方と類似しているのです。
医師が重要視するのは「西洋医学の都合」か「患者の意思」か。
人間の知識は未だ高次元の現象に追いついていません。漢方医学を明確に理解するには高次の「科学力」が必要なのです。
西洋医学に固執し、高次な作用をもたらす医療大麻から目をそらすのか。
大麻は長い歴史をもち、臨床経験も積み重ねられた実績もあるということや患者第一を唱えたリスボン宣言が掲げられているということを認識している専門家は、患者の治療の選択肢を減らし、それどころか罰するという法律をよしとするのか。
これまで、私たちは何を大切に生きてきたのかを考えれば答えはでてくるのかもしれません。
医療大麻のような高次な作用をもつハーブをいち早く取り入れた国はある意味「医療先進国」であると私は捉えています。患者第一の考えで、高次の科学力に向き合うような「強い」国だからです。
「医療先進国」での取り組み。
大麻は品種・株によって、成分が大きく異なります。
「医療先進国」では病気の状況や症状に応じて、大麻の品種や銘柄を選べるというオーダーメイドの医療大麻を扱っています。
また、THCとCBDの比率を成分表示として表示しており、その比率と大麻の品種の組み合わせを考えると非常に多種類の医療大麻があります。
その中から自分に適したものを試行錯誤しながら見つけるようです。
また遺伝子解析などにより、その人に合った適切な成分比率の大麻を提案するといった研究も始まっているようです。
そもそも、西洋薬であろうと、中枢神経系に影響する薬は個人差が大きいのが普通です。
抗うつ薬などもその例です。人によって適切な用量や効き方が異なるため、医師と相談しながら、いくつかの種類の薬からその人に合う薬を選別し、服用量を決めていきます。
そのように考えると、医療大麻においてオーダーメイド医療を取り入れることに抵抗を持つことはおかしなことです。
今後、さらに議論が進んでいくことを願っています。
さらに、大麻やCBDについて詳しく知りたいという方のために、以下のリンク先で網羅的にまとめているので、参考にしてみてください。↓
【CBDについて】その特徴と歴史を徹底解説|ロキ – CBDカウンセリング|note
いかがだったでしょうか。
専門家でない人には少し難しい内容だったかもしれませんが、薬を使う側も知っておいて損はない内容だと思い、取り上げさせてもらいました。
漢方医学と西洋医学、これらは対立するものではなく補完しあうものであるとして強く認識される日が来るかもしれません。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
●医療大麻の医薬品開発が遅れをとる医学的な理由。
●漢方医学はむしろ進んだ高次の医学・薬学である。
●医師が重要視するのは「西洋医学の都合」か「患者の意思」か。
●「医療先進国」での取り組み。