こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。
CBD製品を購入したり輸入する際に何を基準に選べばいいか悩んだことはありませんか?CBD製品を選ぶ時に重要なのが、その製造過程を基準に考えるということです。
今回は、CBDの抽出方法や製品の形態(フルスペクトラム、ブロードスペクトラム、アイソレート、ディスティレート)を比較しながら、どのような製造過程でつくられた製品が最適かを決める際の考え方について解説していきたいと思います。
まずCBD製品を選ぶ際に、「抽出方法」と「製品の形態」のどちらを優先に検討すべきかについてお話しておきたいと思います。いずれも、CBDの製造過程に着目して分類できる項目ですので、今回の記事では一緒に取り上げて考えていきます。
なお、CBDの基本的な内容については過去の記事「CBDオイルとは」をご覧ください。
CBDの製造過程で重要なのは抽出方法よりも最後の精製方法である。
人によっては、CBDオイルの製造過程でまず注目するのは抽出方法かもしれません。
しかし、製造過程で最も大事なのは抽出方法よりも最後の精製方法です。つまり、CBD製品を選ぶ際、抽出方法に注目するよりも最後の精製方法にもっと注目するべきだということです。
そして、最後の精製方法を反映しているのが、CBD製品の形態を示す言葉(フルスペクトラム、ブロードスペクトラム、アイソレート、ディスティレート)になります。
勿論、抽出方法も製品を選ぶ基準としては重要なので後ほど詳しく比較および解説していこうと思いますが、まず先に、より重要なCBD製品の形態について説明しておきたいと思います。
CBD製品の分類(ディスティレート、アイソレート、ブロードスペクトラム、フルスペクトラム)について。
CBD製品は、以下のように最後の精製方法や成分組成ごとにタイプ分けされています。
■ CBDディスティレート:オイル(液体)
抽出後に蒸留したCBDオイル
■ CBDアイソレート:粉末状の結晶(固体)
CBDのみを単離したもの(=最終的に再結晶により得られる高純度CBD)
■ ブロードスペクトラム:オイル(液体)
THC以外の、大麻に含まれる天然成分の組み合わせ
■ フルスペクトラム:オイル(液体)
THCを含む、大麻草内の全ての天然成分を含むオイル(※不純物を除く)
これらの分類ついて簡単に触れておきたいと思います。
CBDディスティレートとCBDアイソレート:最後に実施した精製方法で分類される製品名。
後ほど詳しく説明しますが、麻由来のCBDの分離工程には「大麻草の粉砕→抽出→蒸留→結晶化」という手順があります。
「CBDディスティレート」や「CBDアイソレート」はこのような製造工程(精製工程)のうち、どの段階で製品化されたかを示す製品名になります。
CBDディスティレートという言葉の由来は英語の「distill(蒸留する)」からきており、蒸留後のCBDオイルを意味します。これは製造工程での分類名なので、例えばフルスペクトラムでも蒸留後に得られたオイルであれば「CBDディスティレート」と呼ぶことができます。なお、蒸留とは、物質の沸点(蒸発する温度)の違いを利用して混合物を分離する方法です。
一方で、CBDアイソレートという言葉の由来は英語の「isolate(分離する)」からきており、CBDのみを分離したCBD単体を示します。CBDの分離は最後の工程にある結晶化まで実施して達成されるので、結晶化後のCBDがCBDアイソレートになります。なお、CBDの融点は常圧で66℃程度なので、純粋なCBDは液体ではなく粉末状もしくは結晶状の固体です。
CBDブロードスペクトラムとCBDフルスペクトラム:含まれる成分の組成で分類される製品名。
CBDブロードスペクトラムとは、一般的にTHCを除外した大麻に含まれる天然成分の組み合わせを表します。したがって、精製過程において天然成分からTHCを厳密に除去したCBD製品をブロードスペクトラムと呼んでいます。
しかし、CBDブロードスペクトラムには、CBDアイソレートに他のカンナビノイドやテルペン等を後から加えてオイルに溶かした製品もあります。ふつう、ブロードスペクトラムというとTHCだけを除去して得られたエキスのことを指しますが、日本ではCBD以外のカンナビノイドが1種類でも入っていたら、ブロードスペクトラムと呼ばれていたりします。
一方で、フルスペクトラムとは大麻草内の全ての天然成分を含むオイルに用いる言葉で、大麻成分のアントラージュ効果を最大限に発揮できるオイルとして注目されています。CBDフルスペクトラムは、主要成分はCBDになりますが、その他の成分もできるだけ自然な状態で含まれている製品になります。※アントラージュ効果については過去の記事「アントラージュ効果とは」をご覧ください。
なお、日本で販売されているフルスペクトラム製品は、基本的にTHCの含有量が非常に少ないヘンプという大麻草が使用されており、法律の規制に対応するためにTHCがほぼ除去されたものになっています。
したがって、ややこしいのですが、日本のフルスペクトラムが海外でのブロードスペクトラムのようになってしまっているのが現状です。そして、日本のブロードスペクトラムは、CBD以外のカンナビノイドやテルペンが1種類でも含まれているCBDオイルを指していることが多く、大麻に含まれる天然成分からTHCを除去したオイルという意味合いが薄くなっています。
大麻草由来の天然CBDの製造過程についての概略。
大麻草から抽出する麻由来のCBD製品の精製手順はおおよそ以下の通りです。
※メーカーによって手順が異なる場合もあります。
________________________________________
[粉砕した大麻草由来の茎など]
↓
1.化学的な抽出
↓
2.余分な脂肪分やワックス等の除去
↓
3.蒸留 ※加熱による脱炭酸は蒸留前に行う
↓
[CBDディスティレート]
↓
4.再結晶 (冷却による結晶化)
↓
[CBDアイソレート]
________________________________________
※フルスペクトラムは抽出や簡易な蒸留のみ
※ブロードスペクトラムはTHCを厳密に除去(原料や抽出方法の選別、精密蒸留などでTHCを除去)
なお、今回は、抽出方法と全体の概略についてのみ解説していきます。「脂肪分やワックス等の除去」、「蒸留」、「再結晶」についての詳しい説明は、noteに執筆した記事「CBD製品の製造過程【合成品と大麻抽出物を比較】 -カンナビノイドの組成分析方法(GCとHPLC)も解説-」にありますので、よかったら参照ください。
CBDアイソレートの製造方法における精製過程は、上の精製手順に示した通り、抽出物を蒸留してから再結晶(結晶化)するのが通常の方法だと考えられます。
ブロードスペクトラムは、蒸留後に得られる留分(オイル)に相当するCBDディスティレートであったり、CBDアイソレートに他のカンナビノイドやテルペン等を加えてオイルに溶かした製品であったりと状況によって異なります。なお、蒸留のなかでも精留という精密な精製方法を使えば高純度のCBDが得られます。
CBD製品の品質については、高度な分析機器でこまめに成分分析を行っているメーカーほど信頼性が高いと言えます。例えば、抽出後と蒸留後、再結晶後のそれぞれの工程で得られる試料・サンプルについて、GCやHPLC、MSなどを利用した分析機器の分析データがこまめにとってあるか、ということが重要なチェックポイントになると考えられます。
最近、蒸留の代わりに液体クロマトグラフィーという高度な分離技術を用いて精製したという製品も現れてきています。液体クロマトグラフィーはHPLCという分析機器でも利用されている成分の分離技術です。この方法では蒸留と比較して、有効成分を壊すことなく高度にCBDを分離できます。ただし、デメリットもあります。まず、手間とコストがかかりやすく、将来的なスケールアップが大変であるということが第一に挙げられます。次に、化学操作が増えるので人体に有害な溶剤を使用する過程が増えるということがあります。溶剤に関しては最終的に厳密な除去過程があると思いますが、使用する溶剤が何なのかによって、こういった化学操作における印象が悪くなる可能性は否定できません。とはいえ、方法がうまく確立していればメリットが多く、最後の後処理方法や使用する溶剤によってはそこまで神経質になるような問題ではないかもしれません。
HPLC(液体クロマトグラフィー)や精製過程などについても、noteに執筆した記事「CBD製品の製造過程【合成品と大麻抽出物を比較】 -カンナビノイドの組成分析方法(GCとHPLC)も解説-」に詳細な説明がありますので、よかったら参照ください。
CBDの主な3つの化学的な抽出方法を比較。(エタノール抽出、ブタン・プロパン抽出、超臨界二酸化炭素抽出)
化学的な抽出とは、原料(=粉砕した麻)を適切な溶剤に浸し、原料に含まれる成分を溶出させる方法です。
CBDの製造工程では、まず粉砕した大麻草由来の原料を溶剤により抽出しますが、化学的な抽出方法は溶剤の種類によって主に次の3つの方法に分類されます。
1. エタノール抽出
2. ブタン・プロパン抽出
3. 超臨界CO2抽出
どれも一長一短があり、メーカーによって蓄積されたノウハウや、かけられるコスト、適用される法律などが異なるため、利用する抽出方法は異なってくるでしょう。
この化学的な抽出方法による比較は、CBDオイルの場合、製品の特徴や品質に直接関わってくるので、重要な要素のひとつになります。
※化学的抽出の具体例は、「汚れた雑巾を水につけておくと雑巾に付着した汚れが水に移って水が濁る」という現象です。この例をカンナビノイドの抽出に置き換えると、雑巾が麻原料、水が溶剤、汚れがカンナビノイド(CBD)に相当します。濁った水がカンナビノイドを含む抽出液にあたります。 つまり、化学的抽出とはエタノールなどの溶剤(洗浄液)を用いて麻原料からカンナビノイドを引きはがして(=抽出して)、カンナビノイドの溶液を得る工程になります。
●抽出法の比較を以下の表にまとめました。
抽出溶剤 | エタノール | ブタン or プロパン | 超臨界CO2 |
メリット | ・抽出力が高く、有効成分を多く抽出できる ・溶剤の中では比較的に安全性が高い ・常温では液体で、抽出する時に圧力をかける必要がないため、扱いやすい | ・好ましくない水溶性化合物を抽出しない ・テルペンのような有効成分も多く取り込めて、高品質オイルを抽出できる ・常温で気体のため、エタノールより除去が簡単 | ・圧力と温度を変えることで抽出化合物の成分組成をある程度は調節できる ・人体に無害で、環境にもやさしい ・除去が簡単 |
デメリット | ・苦みのある余計な化合物まで抽出されてしまう ・微量のエタノールが残留しやすい | ・人体に有害なため、取り扱いに注意が必要 ・可燃性の物質で、火災や爆発に注意が必要 ・圧力をかける必要があり、スケールアップが容易ではない | ・非常に高い圧力を要し、繰り返し抽出する必要があるため、意外と効率が悪い ・高額な設備が必要で、スケールアップも容易ではない |
エタノール抽出
アルコール(エタノール)は抽出能力の高い溶剤で、多くの有効成分を抽出できます。エタノールによる抽出は効率が良く、安全に実施できるため人気の方法です。エタノール抽出は、圧力をかけなくても抽出できますし、非常にハンドリングのしやすい溶剤です。
ただし、苦みのある化合物まで抽出されやすく、微量のエタノールが残存しやすいという欠点もあります。
ブタンもしくはプロパンによる抽出
ブタンやプロパンは低沸点の炭化水素化合物(=軽い油)に分類されます。ブタンなどは比較的安価で、エタノールの時のように好ましくない水溶性化合物を抽出しないという利点があります。テルペンなどの化合物を多く取り込めるという長所もあります。したがって非常に好ましい仕上がりになると言われています。
しかし、ブタンやプロパンなどは人体に有害で、かつ火災の原因になりやすい可燃性物質でもあるため、取り扱いには注意が必要です。さらに、抽出に用いる際には一定の圧力をかけることになります。したがって慎重な管理が必要なため、スケールアップにはハードルがあるかもしれません。
ただし、ブタンやプロパンなどが人体に有害であると述べましたが、これは抽出作業を行う人は取り扱いに注意が必要ですが、CBD製品を購入する人にとってデメリットとなることはほぼありません。このことについて、化学の知識がある人なら理由が分かるかもしれませんが、後ほど理由を説明いたします。
超臨界二酸化炭素(CO2)抽出
CO2(二酸化炭素)は人体に無害であり、炭酸飲料にも使用されています。さらに、簡単に除去できて残留することがありません。超臨界CO2抽出ではCO2の圧力と温度を変えることでCO2への溶解度が化合物ごとに変化するため抽出物における化合物の量を調節できます。技術力があり、比較的規模の大きい製造会社が好んで用いています。
超臨界二酸化炭素抽出は、利用している溶剤の化学物質はCO2ですので、非常にクリーンで、人体に悪影響を及ぼさないのですが、製造工程で欠点もあります。問題は、超臨界流体のCO2ではカンナビスの樹脂などを抽出するのに、非常に高い圧力が必要だと予想できることです。さらに抽出を複数回繰り返す手間もかかっているかもしれません。圧力については、炭化水素であるブタンやプロパンによる抽出の時に必要な圧力に比べて10〜100倍の圧力は必要でしょう。これは、超臨界流体にするためには非常に高い圧力が必要だからです。これだと、効率は良くないでしょうし、かなりのコストがかかりそうです。
抽出方法よりも最後の精製方法の方が重要である理由。
最後に、抽出方法よりも最後の精製方法の方が重要である理由をお話したいと思います。
まず最終製品によって抽出法が何かということはあまり問題にならない場合があります。それはCBDアイソレートの場合です。
CBDアイソレートの場合は、最終的にCBD単体を分離するのが目的なので、最初の抽出過程は製品にあまり影響がないからです。したがって、CBDアイソレートでは、蒸留などの工程を経て最後に再結晶で高純度に精製するので、最も手軽なエタノール抽出で問題はないでしょう。CBDアイソレートの場合、むしろ最後の精製操作である再結晶に使用するペンタンやヘキサン、ヘプタンなどのような溶剤の方が残存に注意が必要です。
一方で、直接、フルスペクトラムやブロードスペクトラムなどを意識したCBDオイルを製造する場合には、予算と技術があるなら超臨界二酸化炭素抽出やブタン・プロパン抽出を選択したほうが高い品質が期待できます。
なお、ブタン・プロパン抽出に関しては、抽出後に蒸留する場合、ブタンやプロパンが最終製品に残存するということはほぼあり得ないでしょう。そもそも除去が容易ですし、仮に残存していたとしても、抽出後の脱炭酸や蒸留などの過程でカンナビノイドから完全に分離されるからです。これが、「ブタンやプロパンなどは確かに人体に有害性がありますが、CBD製品を購入する人にとってデメリットとなることはほぼありません。」と前述した理由です。
ブタンやプロパンよりも、先ほども述べたように、CBDアイソレートにおける再結晶で使用するペンタンやヘキサン、ヘプタンなどのような溶剤の方が残存に注意が必要です。
まとめると、以下のようになります。
◆CBDアイソレートのように最後の精製方法が「再結晶」であれば、抽出法はあまり問題にはならないでしょう。
◆その他の精製方法であれば、抽出法が影響してくる可能性があります。
・CBDディスティレートのように最後の精製方法が「蒸留」であれば、ブタンやプロパン抽出だと多くのテルペンが回収できるというメリットがあるでしょうし、超臨界二酸化炭素抽出だと最終製品にデメリットはほぼないでしょう。なお、消費者は無難な超臨界二酸化炭素抽出を好む傾向があるようです。
なお、液体クロマトグラフィーや精留、他の精製方法の組み合わせなどのように、最後の精製方法がメーカーによって上記と異なることがあるため、上記のまとめが必ず当てはまるとは限りません。この点に関しては、技術者や化学に詳しい有識者などに相談できれば心強いでしょう。
いかがだったでしょうか。
今回、天然CBDの製造過程のなかで、説明を省いた「余分な脂肪分やワックス等の除去」や「蒸留」、「再結晶」などの解説や、その他のCBD製品の製造方法については、以下の記事(※画像とタイトルにリンクあり)で網羅的にまとめました。さらに詳しくCBDについて知りたい方には必見の内容となっているので、参照していただけたら幸いです。
上の記事では
◆CBD製品における合成品と天然抽出物の比較【リスクとメリット】
◆CBD製品の具体的な生産方法(製造過程)【大麻からの抽出と化学合成】
◆合成CBDの歴史と最新の研究【化学合成と生物学的技術】
◆カンナビノイド製品における不純物の検出方法や組成分析技術【GCやHPLC】
などの内容を取り上げており、適宜、科学論文などの信頼できる一次情報などを引用しながら記事をまとめているため、CBDを扱う方に役立つようになっています。
また、以下の過去記事も参考になるかもしれません。
参考にしていただけたら幸いです。
興味をもっていただけたらツイッターのフォローもよろしくお願いします。→ロキ(@rokiroki_univ)
ここまで見ていただきありがとうございました!
●CBDの製造過程で重要なのは抽出方法よりも最後の精製方法である。
●CBD製品の分類について。
・CBDディスティレートとCBDアイソレート。
・CBDブロードスペクトラムとCBDフルスペクトラム。
●大麻草由来の天然CBDの製造過程についての概略。
・CBDの主な3つの化学的な抽出方法を比較。(エタノール抽出、ブタンもしくはプロパン抽出、超臨界二酸化炭素抽出)
・抽出方法よりも最後の精製方法の方が重要である理由。