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エンドカンナビノイドシステムとは。大麻成分に効能がある理由。


こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。

今回は大麻成分が様々な疾患の治療に効果がある理由を人体のメカニズムに基づき説明していきたいと思います。

このような生体内のメカニズムは「エンドカンナビノイド・システム(=内因性カンナビノイド・システム)」と呼ばれています。

できるだけわかりやすく解説できるよう心がけますので、ぜひとも一緒に勉強していきましょう。

今回の内容は以下の通りです。

今回の内容
大麻があらゆる疾患の治療に関与できる理由。カンナビノイド受容体の発見。

内因性カンナビノイドの発見。エンドカンナビノイドシステムとは。

エンドカンナビノイドシステムの制御。


エンドカンナビノイドシステムの機能。


THCとCBDの作用に関して。
ピロ
ふむむ。難しそう。やだ。
ロキ
大丈夫や。順を追って分かりやすく説明していくから、しっかりついてくるんやで。

大麻があらゆる疾患の治療に関与できる理由。カンナビノイド受容体の発見。


大麻の重要成分にはカンナビノイドという種類の成分があり、100種類以上あると言われています。その代表的なものがCBDやTHCであり、これらは癌や精神疾患などの治療に効能のある成分だと言われてきています。

これらカンナビノイドが様々な疾患に有効であるのには理由があります。

体内の神経細胞や免疫細胞の細胞膜には物質を認識する‟鍵穴”(センサー)が存在し、この鍵穴に鍵がうまくはまることで、細胞内に情報が伝達され、細胞の生理機能に影響を与えます(下図)

カンナビノイドを‟鍵”とみなすと、それに対応する‟鍵穴”がヒトの体内のいたるところに存在しているということが分かったのです。


この対応する‟鍵穴”をカンナビノイド受容体と呼び、代表的なものにCB1(カンナビノイド受容体タイプ1)とCB2(カンナビノイド受容体タイプ2)が見つかっています。

受容体を鍵穴に例えたのは、特定の構造の物質のみ認識し作用するからです。


下図のようにCB1は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、認知、運動制御、食欲調節、鎮痛、脂肪代謝など多岐にわたる生理機能を担っています。※図は日本臨床カンナビノイド学会のページより引用させていただきました。

CB2は免疫細胞(白血球など)に多く発現し、免疫機能(炎症の制御など)に関与しています。


1964年にラファエル博士らによって、向精神作用をもつTHCが分離・同定され、1988年にはTHCが直接作用する受容体としてCB1が発見されました。CB2が発見されたのはその数年後でした。

これらカンナビノイド受容体が関与する疾患として、うつ病、癌、偏頭痛、肥満、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経性疼痛、多発性硬化症、脊椎損傷、骨粗しょう症、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、緑内障など多数の病気があります。

つまり、カンナビノイド受容体という‟鍵穴”にはまるカンナビノイドという‟鍵”が、これら疾患の治療のヒントを握っていたのです。

内因性カンナビノイドの発見。エンドカンナビノイドシステムとは。

カンナビノイド受容体CB1やCB2に結びついて作用するというシステムが体内に存在するということは、これらのCB1やCB2に結びつく物質がヒトの体内にも存在するはずだと研究者は考えました。

もともと体内に受容体が存在するということは、生体活動において何らかの機能があるはずだからです。

そこで、カンナビノイド受容体に作用する体内物質を内因性カンナビノイドとよび、研究者らによって探索されました。

そして1992年にアラキドノイルエタノールアミド(アナンダミド)が最初の内因性カンナビノイドとして発見されました。

さらに1995年、二番目の内因性カンナビノイドとして、アラキドノイルグリセロール(2-AG)が見つかり、いずれも脂肪酸(アラキドン酸)の代謝物でした。

内因性カンナビノイドの発見
1.植物性カンナビノイドである大麻成分THCが作用する受容体(鍵穴)CB1、CB2がヒトの体内で見つかる。



2.ヒトの体内に受容体(鍵穴)CB1、CB2が存在していたのはなぜか。



3.その理由は、体内にもこの受容体に作用する(鍵穴にはまる)情報伝達物質がもともと存在しており、細胞間の情報伝達制御が行われているからだと予想。



4.この体内にもともと存在していると予想される情報伝達物質を内因性カンナビノイドと名付ける。



5.予想通り1992年にアラキドノイルエタノールアミド(アナンダミド)が最初の内因性カンナビノイドとして発見される。


これら内因性カンナビノイドは細胞膜などの脂肪酸から合成されています。また、特定の分解酵素の存在する環境では、アナンダミドや2-AGはそれぞれ脂肪酸に分解されてしまいます。

このような内因性カンナビノイドの生合成、酵素による分解、カンナビノイド受容体との作用などの一連の体系を内因性カンナビノイドシステムとよび、エンドカンナビノイドシステム(ECS)とも言われています。

内因性カンナビノイドシステムは細胞間のコミュニケーション機能の制御を行うシステムとも言えます。

なお、大麻草由来のTHCやCBDなどのカンナビノイドは、アナンダミドや2-AGのような内因性カンナビノイドと区別して、植物性カンナビノイド(フィトカンナビノイド)と呼ばれています。


以下の図はBOOJUM GROUPのサイトより引用した図です。

引用:BOOJUM GROUP


図中では、左に内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)、右に植物性カンナビノイド(フィトカンナビノイド)が示されています。

ロキ
ん?つまりどういうことや?…安心してくれ。これからの説明で全体像がわかってくるねん。

エンドカンナビノイドシステムの制御。

受容体に作用する‟鍵”には二種類あります。その二種類の‟鍵”とはアゴニストとアンタゴニストです。

…また専門用語かよ。と思うかもしれませんが、大丈夫です(笑)。
覚えるのは二つだけです。

引用:参考書籍『医療大麻の真実』より


アゴニストとは作動薬と訳され、受容体に結び付くと細胞内に情報が伝達され、細胞内部の反応を誘発する働きを持ちます。

アンタゴニストとは拮抗薬と訳され、鍵穴(受容体)にははまるのですが、受容体の機能は発現せず、アゴニストと受容体の相互作用(細胞内への情報伝達)を阻害します。

ドアの鍵を開けるために鍵穴に鍵を差し込もうとすると、鍵穴に詰め物がされていて、鍵を差し込めなかったみたいな状況です(笑)。

ロキ
例えが下手でも気にしたらあかんで。そんで、話はここからがめちゃ面白いねん。


人間には体内のバランス(定常状態)を保つための調節機能があります。これをホメオスタシスといいます。例えば、運動をすると筋肉に熱が発生しますが、このままでは体温が上昇してしまうので体温を一定に保つために汗をかくようになっています。

エンドカンナビノイドシステム(ECS)も一種の体内における調節機能です。

ヒトなどの代謝系では恒常性を保つためのフィードバック調節があり、例えばアゴニストが不足するとアゴニストの生成を促進し、逆に過剰にアゴニストが存在するとそのアゴニストの合成を阻害したり、別の反応にそのアゴニストを消費させるような経路を進行させたりします。


悪い菌が発生したり悪性の腫瘍ができた時に、もしも細胞間の情報伝達があまり行われず、悪者を倒す細胞の機能が十分に働かない場合には、菌や腫瘍を攻撃して体内を守ることができません。

逆に過剰な情報伝達が起こってしまうと、正常な細胞まで悪者だと勘違いして正常細胞を傷つけてしまいます。アレルギー症状などがその例です。


そこで、このように代謝機能に異常が生じたときカンナビノイドの作用(細胞間の情報伝達)が不足している場合にはアゴニストが必要なためアゴニストの生成を促進する、もしくはアゴニストを補充する目的で薬や栄養を補給します。

逆に暴走して過剰に作用が起こってしまった場合はアンタゴニストで受容体の作用を阻害して、バランスを整える、というのが基本的な考え方です。


つまり、人の身体にはもともと調節機能が備わっていますが、それが何らかの形で異常をきたしたときには、その調節機能をサポートして正常な働きに導く必要があります。

エンドカンナビノイドシステム(ECS)においては、そのサポートで適切な働きを示してくれるのがTHCやCBDのような植物性カンナビノイドを有する大麻なのです。

エンドカンナビノイドシステムの機能。


一般的に内因性カンナビノイドは強い免疫系、正常な睡眠サイクル、正常な食欲や代謝、健康な身体調節を確保するために存在すると言われています。

実際に研究でカンナビノイド欠乏症が炎症性疾患や自己免疫疾患、うつ病、PTSD、糖尿病、骨量の減少、神経痛などの疼痛、加齢による病気などの根本的な原因であるということがわかってきています。

つまりストレスや老化はカンナビノイド欠乏症を進行させるのです。

これをエンドカンナビノイド不全症候群といったりもします。

このような例は良くあります。例えば、ドーパミンが欠乏するとパーキンソン病になると言われます。

カンナビノイドに作用する受容体は神経細胞や多くの臓器、免疫細胞など身体のあらゆる部分に存在するため、カンナビノイドが欠乏すると様々な病気の原因になるのです。


また、体内の調節機能は非常に優秀で、体内の状況に応じてカンナビノイド受容体が増減することが明らかになっています。

多発性硬化症や癌になるとカンナビノイド受容体の発現が増加することが知られています。この増えた受容体が作用して、症状を軽減したり、疾患の進行を阻害します。

すなわち、このような疾患の時にカンナビノイドを摂取することは理にかなっているといえるのです。


参考文献)

1)Pharmacol Rev. 2006, 58(3), 389–462. (doi : 10.1124/pr.58.3.2)
2)FEBS J . 2013, 280(9), 1918–1943. (doi : 10.1111/febs.12260)
3)Cerebrum 2013, 14. (Getting High on the Endocannabinoid System)

THCとCBDの作用に関して。

THCはCB1やCB2のアゴニストとして作用します。そのため、多くの有益な薬理効果があります。

一方で、CB1が過剰に刺激されると多幸感などによる向精神作用や筋肉硬直、肝臓障害などの副作用があると言われています。しかし、CBDはCB1のアンタゴニストとして働くため、そのような副作用を抑制します。

実は、THC単体やCBD単体ではなく、THCとCBD、他のカンナビノイドなどを合わせて摂取することで、エンドカンナビノイドシステムを正常に導く効果を最大限に引き出せるということが分かってきています。

このような複数の成分による相乗的な作用はアントラージュ効果と呼ばれています。これは別の記事「アントラージュ効果とは。」で紹介しているので参考にしてみてください。


CBDはCB1のアンタゴニストであり、CB2との親和性も低いのですが、これらとは別のいくつかの受容体と作用することがわかっており、抗がん作用、抗うつ作用、鎮痛作用、抗炎症作用、神経保護などの様々な効果があるということがわかってきています。

また、CBDはアナンダミドなどの内因性カンナビノイドの分解を阻害し、内因性カンナビノイドの濃度を高める働きがあるということが分かっており、間接的にカンナビノイド受容体に作用することが知られています。

さらに、CBDは副作用がほとんどなく、非常に安全性が高いともいわれています。


なお、内因性カンナビノイドに関しては、アナンダミドよりも2-AGのほうが生体内の濃度が高く、効率よくカンナビノイド受容体と結合すると言われています。

今回の内容を以下にまとめました。


実際には、カンナビノイドの種類によってはCB1やCB2以外の受容体にも作用します。ですが、ここでは詳細は割愛させていただきます。

他にもCBDについて各疾患に対する効果を調査した研究の話などもまとめる予定ですので、また一緒に勉強しましょう。

さらに、CBDや大麻について詳しく知りたいという方のために、以下のリンク先で網羅的にまとめているので、参考にしてみてください。↓
【CBDについて】その特徴と歴史を徹底解説|ロキ – CBDカウンセリング|note


最後に参考書籍などを載せておきます。

『カンナビノイドの科学』は図解が多くて非常にわかりやすく、専門的な内容もかみ砕いて解説されていて万人におすすめの一冊です。

『医療大麻の真実』はより専門的な内容になっており、それぞれの疾患に対する説明が詳しくされていて非常に面白いです。興味のある方はみてみてください。

それではまた次回!

参考書籍。