こんにちは。ロキ(@rokiroki_univ)です。
今回は「なぜCBDの原料になる大麻は違法になっているのか。」についてお話したいと思います。そこにはアメリカの歴史が関係しています。
今回の内容は以下の通りです。
内容に入る前に、今回の記事の参考文献をご紹介します。
佐久間裕美子さんの「真面目にマリファナの話をしよう」という著書です。↓
皆さんは、大麻が違法な理由を知っていますか?
もしも理由が危険なドラッグだからだと思っているならば次のように考えてみてください。
本当は、なんとなく噂を聞いたことはあるけれど確かめていないからはっきりとはわからない…と。
そのうえで、以下の引用文を読んでみてください。
神奈川県藤沢市在住の元レストラン長・山本正光さんは、2015年に大麻200グラムを所持したとして警視庁に逮捕された。2000年に肝臓がんが見つかり、治療を始めたが、2014年には余命半年の宣告を受けた。医師には「打つ手がない」と言われたが、インターネットで得た知識からマリファナに救いを求め、マリファナに治療の可能性を託した。… 山本さんは違法と知っていながら、自宅で栽培し、摂取することにした。結果、食欲が回復し、睡眠がとれるなどクオリティ・オブ・ライフの改善がみられたという。… スーツ姿の山本さんが車椅子で出廷し、「ほかに治療方法がなかった」と主張していたという。…
引用:『真面目にマリファナの話をしよう』
この話を知ってあなたはどう思いますか。マリファナは癌の治療に効くというのは有名な話です。
前回の記事「CBDオイルとは。」にも同様のことを書きましたが、マリファナやその抽出物で知られるCBDは癌の増殖や転移を抑える機能がわかってきており、最近になって人間の身体で癌が治ったという臨床報告も出てきています。しかも深刻な副作用はほとんど出ていないようです。
これを聞いて、なにが起こっているんだ?と混乱される方もいらっしゃるでしょう。それを解決するヒントは歴史にあります。
では、まずアメリカの歴史から見ていきましょう。
アメリカのマリファナ違法化と合法化運動の歴史。
マリファナは別名カンナビスといいます。カンナビスは主に医学的・化学的に使用される用語です。マリファナが合法化された州のマーケティングでも、マリファナという言葉には偏見があるため、カンナビスという用語を普及させていこうという流れがあるようです。
アメリカでは、もともとカンナビスは医薬品として広く使われていました。
ところが、1920年代に入り、状況が変化していくのです。
この頃にメキシコからの移民がメキシコ産の大麻草を流入するようになりました。
そして1929年の大恐慌をきっかけに、メキシコ人労働者がアメリカ人の仕事を奪い治安を悪化させているとし、メキシコ人がたしなむ大麻草を悪とみなすようになりました。
マリファナ嫌いの投資家たち。
一方で、アメリカはアルコールの摂取を全面的に禁じる禁酒法を施行していました。
ところが、禁酒の取り締まりが困難を極めていたことや大恐慌が始まったことによる経済的な理由から禁酒法を撤廃しました。お酒を解禁することで税金を徴収し、経済に潤いをもたらそうとしたのです。
禁酒法が撤廃されたことにより、職を失う人たちがいました。禁酒法を監督していた禁酒局の人たちです。
その一人のアンスリンガーは新しくできたばかりの麻薬局の局長に任命されました。しかし、局は小さく、閉鎖される危機感がありました。そこでヘロインやアヘンといった危険ドラッグよりも使用者人口の多いマリファナに目を付けました。
また、アンスリンガーとともにマリファナ取り締まりのためのマリファナ・ネガティブキャンペーンを進めた男に新聞社を経営していたハーストという投資家がいました。
彼が大のマリファナ嫌いであったことには理由がありました。
ひとつは父親から受け継いだ土地がメキシコ革命をきっかけに没収されてしまい、マリファナの使用が象徴的だったメキシコ人に憎しみを募らせたからです。
さらに、彼らがマリファナを悪に仕立てたもう一つの理由があります。
大麻草は産業用途として布や紙の材料に使われてきており、科学者からは紙や繊維などにおける未来の資源と目されるようになっていました。ところが、新聞ビジネスの維持のためにハーストは材木を使った製紙法に多額の資金を投資していました。
ハーストは大麻草のポテンシャルに警戒していました。このように、石油化学会社や化学繊維会社、製薬会社などに投資していた権力者らにとって大麻は非常に邪魔な存在だったのです。
マリファナのネガティブキャンペーン。
アンスリンガーらによるマリファナのネガティブキャンペーンが過熱化し、ついに各州の警察に大麻取り締まりの許可を与える法律が制定されました。
一方でアンスリンガーは医者や科学者30人にマリファナについて意見を求めていましたが、29人がマリファナの違法化に反対意見を表明しました。しかし、これら専門家の意見を無視してアンスリンガーは突き進みました。
こうして、1930年代後半には世論が「マリファナ=悪」となりました。これにより、マリファナの医療効果の研究も進まなくなってしまいました。
マリファナの合法化運動が過熱化するたびに、メキシコ人や黒人などを差別的に悪役に仕立て上げ、マリファナのネガティブキャンペーンをさらに拡大していきました。
危険ドラッグ:スケジュール1にマリファナを組み込む。
マリファナ合法化運動が激しくなる中で有名な話として、マリファナ税法違反で裁判にかけられた学者が、マリファナ税法は憲法に違反すると主張し、最高裁はマリファナ税法は違憲であると判決を下したという出来事がありました。
ところが、1969年に大統領がニクソン大統領になったことで、またしても合法化運動の風向きが悪くなります。
マリファナ合法化運動の支持者たちはマリファナを愛と平和の象徴として掲げていました。これに対して、反戦運動や公民権運動を敵視していたニクソン大統領はマリファナを含むドラッグ全般を規制する法案を準備するよう命じました。
法案はヘロインなどとともに、マリファナを最も危険な違法ドラッグであるとするスケジュール1に指定する内容でつくられました。
ところが、1972年に、医学会や刑事司法専門家などからリサーチを積み上げた調査委員会は報告書「マリファナ:誤解の可能性」を提出しました。
マリファナを危険ドラッグとして扱うのではなく、アルコールなどのように各自が責任のある付き合い方に誘導するように主張するものでしたが、ニクソン大統領はこれを黙殺しました。
世論の転換とカリフォルニア州での医療用マリファナの解禁。
1977年、大統領が変わり、世論はマリファナの非犯罪化に向いてきました。
ところが世論の風向きが変わります。違法とされていたがゆえに反発する一部の若者がマリファナ吸引のサブカルチャーに染まるのです。ここで、善良な親たちのアンチ・マリファナ運動が怒涛の如く全米に広がりました。
政府は立場を変えて、マリファナの取り締まりを強化する方向にシフトしました。
しかし、またしても合法化運動が活発化する出来事が起こるのです。エイズの流行です。
緑内障やエイズ、癌などの症状にマリファナが有効な効能を示したこともあり、何人もの犠牲を生み出しつつもマリファナ支持者たちの闘争が続きました。
1990年代、多数の寄付や署名を集めた運動家と、それに対抗する政治家の苛烈な戦いが繰り広げられました。
その結果、ついにカリフォルニアの奇跡が起こるのです。1990年代後半、カリフォルニア州で医療マリファナの解禁が決まりました。
アメリカで進むマリファナの合法化。なぜCBDではなくマリファナなのか。
その後、運動家たちの努力により各地で続々と医療マリファナや嗜好マリファナの解禁が進みます。
2019年時点での大麻の合法化状況を以下に引用します。これはNational Conference of State Legislatureのサイトによるものです。
深緑色:嗜好用マリファナと医療用マリファナの合法
緑色:医療用マリファナの合法
黄緑色:CBDの合法 限定量のTHCにおいて合法
黄色:大人の使用のみ合法
灰色:違法
ここで、CBDとTHCに関して簡単に捕捉だけしておきます。
これらはマリファナ由来の成分であり、いずれも医療効果やリラックス効果などがあるとされています。THCでのみ、みられる薬効もあればその逆もあります。
ところが、これらの成分は共存することにより相乗効果を示しており、分離すると十分な効果が発揮できないことがわかっています(アントラージュ効果)。CBDはTHCにある陶酔作用を抑制することも証明されています。
このことが、CBDは単体で安全性が高いとWHOで認められていても、単にCBDのみの使用で解決できない問題となっています。それだけカンナビス(マリファナ)にこだわる価値があるのです。
勿論、CBDだけでも有益な効果があり、何より「ハイ」になることがなく安全性も高いため、CBD単体で好まれる傾向もあります。
国際的なマリファナ事情。カリフォルニア州での合法化の流れに乗る国々。
WHOは2018年にCBDに関しては以下のようにまとめています。
●CBDには乱用や依存症のリスクは認められない
●臨床実験でてんかんの治療に効果があることがわかっている
●その他複数の疾患についても、効果があることを示す予備実験がある
●報告されている副作用は、CBDとそのほかの薬剤との関係によるものであり、CBD自体の安全性は高い
●CBDの嗜好的使用が問題になっていることを示す証拠はない。
世界的に大きな見解の変化が今まさに起こっています。
カリフォルニア州での合法化の流れにのり、2001年にはカナダが医療用のマリファナを合法化しました。さらにオーストリア、イタリア、ルーマニア、チェコ、コロンビア、ドイツ、メキシコ、ノルウェー、ポーランド、トルコ、スイス、チリなどで医療大麻の使用が許可されました。
身近なところでは2018年に韓国が医療大麻を合法化しています。
同じく2018年、カナダでは嗜好用も含めてマリファナの完全合法化が決まりました。カナダを例に日本人が取材した動画もyoutubeにありました。↓
日本でのマリファナ違法化の経緯。
日本では歴史的に古い時代から麻が栽培され、布やしめ縄などで広く使われていました。日本に植生する麻は向精神作用をもたらすTHCはごく微量しか含まれておらず、ハイになる効果はほぼなかったようです。
しかし、戦後日本での反戦運動や産業大麻の普及を規制するためにGHQは大麻取締法を公布しました。日本はアメリカのマリファナ政策に巻き込まれたのです。
日本には産業用に使用されていた歴史は有名でしたが、吸引するという歴史は海外諸国と比べてあまりありませんでした。そのことが、法で取り締まられたことへの疑問につながらなかったのでしょう。
アメリカではマリファナ問題は人種差別そのものでした。だからこそ幾度となく争われてきました。
生涯をかけて闘ってきた数多くの物語が気になる方は是非、今回の参考図書である『真面目にマリファナの話をしよう』を読んでみてください。実際にアメリカで生活していた著者が体験した、現地での移り行く時代の波がリアルに描かれています。↓
いかがでしたか。
なぜ、大麻を違法化し、それを良しとしているのかというのは、
医薬や材料分野における合成化学の発展と大麻との対立構造が投資家たちを刺激し、大麻を取り締まる過程で差別などの人権問題を生み、社会問題に膨れ上がるとともに、研究が妨げられてしまうことで、有益でありうる大麻の真の姿が表の世界から消えてしまったから
といえます。
とはいえ、日本では大麻の所持は禁止されています。くれぐれも法を犯さないように細心の注意を払ってください。
さらに、CBDについて詳しく知りたいという方のために、以下のリンク先で網羅的にまとめているので、参考にしてみてください。↓
【CBDについて】その特徴と歴史を徹底解説|ロキ – CBDカウンセリング|note
●アメリカのマリファナ違法化と合法化運動の歴史。
1.マリファナ嫌いの投資家たち。
2.マリファナのネガティブキャンペーン。
3.危険ドラッグ:スケジュール1にマリファナを組み込む。
4.世論の転換とカリフォルニア州での医療用マリファナの解禁。
5.アメリカで進むマリファナの合法化。なぜCBDではなくマリファナなのか。
●国際的なマリファナ事情。カリフォルニア州での合法化の流れに乗る国々。
●日本でのマリファナ違法化の経緯。